出向社員の就業規則は出向元・出向先のどちらのものが適用になりますか?
出向社員の就業規則は出向元・出向先のどちらで適用される?
雇用先の会社に在籍したまま他の企業において長期間に渡って業務に従事することを、出向と呼びます。
出向先とも労働契約を結ぶ出向の場合は、指揮命令権についても出向先にあるという考え方が一般的です。
しかし出向について厳密に定めた法律はないため、出向社員に関する就業規則の適用やその扱いについて頭を悩ませる事業主も大変多い実態があると言われています。
出向社員における就業規則の適用の考え方
出向社員の就業規則適用で悩んだ時には、「労務提供は出向先で行われる」という基本を確認することで、その判断を行いやすくなります。
例えば、A社に入社した従業員がB社に出向となり、4月1日からB社のオフィスに勤務することになった場合は、仕事をする上で欠かせない下記事項については当然、B社の就業規則を守る形となります。
・労働時間(始業終業時間)
・休憩
・出張
・休暇休日
・服務規律
・安全衛生
これに対して当該従業員の雇入れをしたのはA社という考え方もあるため、解雇、退職、人事異動、労働者の地位に関わる事項については、A社の就業規則が適用になるのが一般的です。
出向社員の懲戒についても注意が必要
出向社員の懲戒処分については、出向元・出向先いずれかでしか行なえません。
当該従業員の問題が度重なった時に解雇という状況に陥る可能性もあることを考えると、原則として出向元の就業規則を適用して懲戒処分をするケースが多いようです。
また出向先の会社で出向社員が問題を起こせば、当然その会社で働き続けることは難しい状況が生まれますので、「出向元の会社に戻して処分をお願いする」といった意味でもこの部分の対応は出向元に委ねられると捉えて良いでしょう。
出向社員の賃金に関する就業規則の適用
出向社員の賃金については、月ごとに支払う給料、昇給・賞与、退職金のカテゴリによって考え方が異なります。
労務を提供されている出向先の会社で月々の賃金が支払われている場合は、支払い者の就業規則が適用される仕組みです。
これに対して昇給や賞与については当該従業員の出向元における地位などにも関わってくる部分となりますので、原則的には出向元の就業規則に従って支払われると考えて良いでしょう。
ここまで紹介したように、出向社員の就業規則の適用はそれぞれの会社によって変わってくる部分も大きい実態があります。
しかし就業規則適用の範囲を曖昧にしておくと、出向元・出向先との間でトラブルが生まれることもありますので、その境界線や判断についてわからない部分が出てきた時には早めに労働基準法を得意とする弁護士にサポートを仰ぐようにしてください。