雇用契約書で「有給休暇なし」にすると法律に負けるって本当ですか?
雇用契約書の中で「有給休暇ナシ」と記載したい
これから雇入れをする従業員に対して「なるべく会社を休んで欲しくない」といった想いを抱える事業主の中には、最初に取り交わす雇用契約書の中で年次有給休暇を与えない記載をしようと考える方々も大変多く見受けられます。
また労働問題の問い合わせの中には、「雇用契約書と就業規則、労働基準法の中で、最も効力の強いのはどれだろうか?」といった質問をする会社経営者も少なくない実態があるのです。
今回は、年次有給休暇を例にしながら、雇用契約書の効力について皆さんと一緒に考えていきます。
雇用契約書とは?
事業主と使用される側の間で労働条件を明確にする目的で取り交わす書面を、雇用契約書・労働契約書と呼びます。
この他に、労働基準法第15条では、法定項目を労働者に通知する労働条件通知書の交付を義務付けています。
雇用契約書と労働条件通知書の違いは、前者に法的な発行義務ないことです。
後者については書面交付をしなければ労働基準法違反で刑事罰になることもあるため、注意をしてください。
雇用契約書にはどんな内容を記載する必要があるの?
前述のとおり法的な作成義務のない雇用契約書には、絶対的必要事項とも言える項目はありません。
しかし類似の書面となる労働条件通知書においては、下記5項目が必須事項となるため、同じ内容で雇用契約書を作る事業主が多い傾向があるようです。
・労働契約期間に関する内容
・業務や労働場所に関する内容
・労働時間に関する内容
・賃金に関する内容
・退職に関する内容
こうした形で、労働基準法施行規則第5条で定める事項を見ていくと、その中に労働時間に関する項目がある限り、必ず書面の中で年次有給休暇に関する記載をしなければならないと言えそうです。
雇用契約書の中に「有給休暇を与えない」と記載したらどうなるの?
雇用契約書や就業規則の内容は、労働基準法をベースに記載する必要があります。
そのため、雇用契約書よりも遥かに効果の高い労働基準法の中で、年次有給休暇の付与条件が定められている限り、それよりも厳しいルールを事業主側で定めても法律的に無効となってしまうのです。
また就業規則についても、労働基準法を土台とする内容である必要がありますので、「就業規則の中で規定したからウチの会社は有給休暇ナシにする!」といった取り決めも法律に負けて無効になると捉えてください。