賞与と残業代を相殺することは可能?それとも違法?
残業代を賞与と相殺したい
従業員に支払う人件費を少しでも削減したいと考える事業主の中には、「賞与と残業代の相殺は可能ですか?」といった相談をされる方々が非常に多い実態があります。
また残業代だけでなく、多くの従業員の賃金計算に面倒と感じている会社の中でも、「月々の割増賃金を賞与のタイミングで支払っても良いのではないか?」と考える人事担当者が少なくない実態があるのです。
ではこうした方々の閃きのとおり、従業員の残業代や割増賃金をボーナスで相殺することはできるのでしょうか?
毎月払いの原則をご存知ですか?
この話について考える上で最初に知っておくべきなのは、労働基準法の24条で定めている毎月払いの原則に関することです。
この原則の中では、従業員の賃金を毎月1日~末日までの間に少なくとも1回支払うことを、雇用者の義務として定めています。
そのため、会社と従業員の間にどんな事情があったとしても、賃金と呼ばれるものは必ず月1回のペースで支払いを行う必要があるのです。
毎月払いの原則から外れる例外とは?
従業員の生活を安定させる上で欠かせない毎月払いには、いくつかの例外があります。
例えば、資格取得をした従業員に支払う資格手当のような臨時に支払われる賃金は、毎月払いや一定期日払いの原則から外れる形です。
また当ページのテーマになっている賞与についても、毎月払いの原則に該当しない存在となりますので、月々支払うべき賃金とボーナスは全く異なる存在と捉えるべきだと言えるでしょう。
賞与の意味を知っていますか?
年に1回~2回ほど支払われる賞与は、本来、利益の調整をするために存在しています。
そのため、売上のアップや従業員の努力によって会社の経営状況がよくなれば、利益の分配とも言える形でボーナスの額を上げることもできるのです。
これに対して残業代や休日出勤のお金は割増賃金となりますので、利益の調整とは全く異なる位置づけであることから考えても、ボーナスのタイミングで支給するのは違法であると捉えた方が良さそうです。
残業代の支払い方で疑問がある場合は?
残業代の支払い方やボーナスに関することで疑問がある場合は、労働基準法に詳しい法律の専門家に相談をしてください。
労働基準法を得意とする弁護士の場合は、残業代未払いなどの訴訟問題も取り扱えますので、既に従業員との間にトラブルが起こりかけている時には早めに相談をした方が良いと言えるでしょう。